「More-Than-Human(モア・ザン・ヒューマン)」は、立教大学のマルチスピーシーズ人類学研究会とÉKRITSが取り組んだ産学連携プロジェクト。マルチスピーシーズ人類学と環境人文学をめぐる国内外の研究者9名へのインタビューを、日英二言語の記事として編集し、特設サイトにアーカイブしました。のちに以文社から『モア・ザン・ヒューマン ── マルチスピーシーズ人類学と環境人文学』として書籍化されています。
More-Than-Human — Multispecies / Environmental Humanities
以前から、ÉKRITSとマルチスピーシーズ人類学は、存在論的転回やアニミズムなどのテーマで共鳴しており、それがこの産学連携へと実を結びました。本プロジェクトでは、マルチスピーシーズ人類学から環境人文学へと視野を広げながら、文化人類学、文学、哲学などの領域を横断しました。人間と人間以外による「世界制作」の可能性を探ることが、通底する問いになっています。ÉKRITSは編集・記事化と翻訳の進行、アーカイブの設計を担当しました。
「人間」を単位にしない
「モア・ザン・ヒューマン」とは、人間の共同体よりも大きく、人間だけでは語り尽くせない世界のこと。人間以外の種も、それぞれの時間を生き、互いに影響を与えながら世界をつくっている。これまでの人間中心主義の前提そのものを組み替えることを目指しています。
この連載で編集の指針にしたのは、専門的な内容を安易にわかりやすくするのではなく、研究者がフィールドと概念のあいだで思考する過程ごと、分野の外にいる読者にも届く形へ整えることでした。インタビューでは、完成した理論だけでなく、フィールドで出会った出来事に揺さぶられ、考え方を更新していく運動も語られます。その声を均質な解説へ変えてしまわず、読者が思考に立ち会えるテキストを目指しました。
すべての記事は、日本語と英語の二言語で公開しています。日本語でおこなわれたインタビューは英語へ、英語でおこなわれたインタビューは日本語へ移し替え、それぞれを記事として編集しました。翻訳は、同じ内容を別の言葉へ置き換えるだけの作業ではありません。異なる言語や研究文化のなかで、概念がどこに位置するのかを確かめ直すことです。二つの言語を往復する編集によって、国内の読者と海外の研究コミュニティのあいだに、新たな関係をつくっていきました。
答えを閉じないアーカイブ
特設サイトには、研究成果を報告する機能と、研究者や学生、一般の読者へ問いをひらく機能が同居しています。そこで、ひとつの結論を中心に置くのではなく、1つのイントロダクションと9つのインタビュー、3回の座談会をインデックスで結び、関心のある場所から読みはじめられる構造にしました。日英のステートメント、監修者のプロフィール、関連するイベントやリリースも、プロジェクトを構成する記録として一覧できます。
アーカイブとは、終わった研究を保管する場所ではなく、異なる時代や分野の読者が何度でも関係を結び直す場所でもあります。「モア・ザン・ヒューマン」の領域に踏み出した人たちが思い描く現在を残し、それが誰かの次の一歩を築く足場になること。研究成果を見せること以上に、研究の蓄積に感応できるものにすること。このWebサイトでは、ÉKRITSの記事フォーマットを活かしつつ、知の強度を落とさないようにアーカイブをデザインしました。
Web記事から書物へ
連載の終了後、日本語テキストの書籍化プロジェクトが立ち上がり、2021年9月に以文社から『モア・ザン・ヒューマン ── マルチスピーシーズ人類学と環境人文学』が刊行されました。書籍化にあたっては、Webの記事をそのまま再録するのではなく、3回の座談会を軸に全体を三部構成へ編み直し、奥野氏による序論とナターシャ・ファイン氏によるあとがきを加えました。OVERKASTは、装丁のデザインと以文社の「人間を超える」という新シリーズのデザインを担当しています。
Webでは複数の入口から思考のあいだを移動できる一方、本にはページをめくりながら議論の展開をたどる時間があります。同じテキストでも、メディアが変われば、読者との関係も変わる。Webを活動が続いていくアーカイブとして、書籍を思考の流れに身体を与えるオブジェクトとして、それぞれが異なる仕方でプロジェクトを持続させるように設計しました。
Scope of work
Planning
Creative Direction
Content Editing
Translation Management
Information Architecture
Web Design
Web Development
Book Design
Project Management
Client
立教大学 マルチスピーシーズ人類学研究会
Year
2020–2021
Team
Creative Direction, Editing, Information Architecture: Hiroshi Obayashi (OVERKAST, Inc.)
Editing, Project Management: Namino Sakama (OVERKAST, Inc.)
Book Design, Series Logo Design: Yukihiko Kurihara (ÉKRITS)
Web Development: Kanako Fukiage (ÉKRITS)